肛門周囲膿瘍になってしまった…
これはある男の肛門周囲膿瘍との戦いの記録だ。
肛門周囲膿瘍とは肛門周囲に膿が溜まって腫れてしまう病気です。
肛門管内にある肛門陰窩というところから細菌が入って肛門や直腸周辺が化膿してしまい、悪化すると痔瘻という一般的には手術しないと治らない病気になってしまいます。
昨年の5月頃、私は自分の肛門周辺に違和感を覚え始めた。
その時は特に痛みや腫れなどはなく、あくまでも違和感といった感じであった。
そしてその違和感は2〜3日すると収まり、しばらくするとまた違和感が出るといった形で定期的に私はその「違和感」を感じるようになった。
私は当時、特に痛みのないその現象を「取るに足らない問題」として考え、誰に相談するわけでもなく日々の生活を送っていた。
しかしながら肛門周囲膿瘍の影は、私にそっと刃を向けて着々と近づいてきていたのだ。
昨年の7月頃からその違和感は明らかなる「痛み」へと変貌を遂げるのであった。
私はその「痛み」に対して…
「まだそこまで痛くない!全然我慢できるから大事なことはない!!しばらくすればよくなるはず」
そう私は自分に言い聞かせてボラギノールを片手に自然治癒という淡い期待を胸に、その明らかなる肛門の痛みに目をそらした。
※ボラギノール公式ホームページによると肛門周囲膿瘍は市販薬では治すことができないそうです。
痔ろう(痔瘻)の特徴|ボラギノール公式ブランドサイト (borraginol.com)
そして昨年の8月下旬、その時が訪れた。
いたい痛いイタイ!!
ケツガ痛いッッ!!
具体的にどこかよくわかんないけど肛門周辺超痛い!
そしてケツが熱ッ!!
今まで積み重ねてきたものが一気にあふれる…
まるでダムが決壊したかの様に痛みが押し寄せてきた。
こ…これは…さすがにヤヴァイ…病院に行くべきか…
有り余る痛みに「病院」の二文字が私の脳裏によぎった。
しかしながら月末は仕事が忙しく、なかなか病院に行くことができない…
いや…それは表向きの理由だ…
私の深層心理の中では、いくら病院とはいえ人に肛門を見せる行為に恥じらいを感じて病院へ行きたくないのだ。
そして9月に入る頃…
肛門への疼痛が増すばかりで、一向に回復の兆しを見せない。
その上、いかなる体勢になろうとも肛門への痛みが和らぐ事がなくなり、睡眠の妨げになった。
常に襲ってくる肛門への痛みと睡眠不足、月末月初の忙しさも相見あい、私の精神は疲弊していった。
痛み、眠気、忙しさとの戦いに限界を感じた私は、あえなく病院へ行くことを決意するのであった。
※ケツだけに決意したとうまい事言ったとかは思っていません(笑)
昨年の9月初旬に意を決して病院へと向かう事にした私は、途中アクセルを踏む度に訪れる肛門への痛みに耐え、苛立ちを覚えながらも会社近くの病院へと車を走らせた。
病院につくと最初の難関が立ちふさがっている。
ある意味では最初にして最大の難関と言っても過言ではない…
こんにちは〜!今日はどうされましたか〜?
そう…
人前で自分の置かれている状況を説明するという、とんでもない難関が待ち受けていた。
お…おしりが…痛くて…
おしりですか〜!具体的にはどのような症状ですか?
私は周囲に聞かれても恥ずかしくないであろう言葉を選んでこの難関を乗り切る予定だったのだが、この受付女性は詳細を求めてきた。
肛門が…痛くて…何かができているみたいです…(/ω\)
公開処刑されている気分だ。
すると受付女性は1枚の紙を取り出して私に渡しながら…
そうですか〜わかりました。ではこちらの用紙に記入をお願いします。
はい…
(ん!?紙に症状を詳しく書くところあるじゃん…さっきのやり取りの必要性は??)
受付女性とのやり取りに少々疑問を覚えながらも渡された用紙に必要事項を記入して受付の女性に渡した。
すると席で待つように促されたので指示の通りに席に座ることにした。
病院の椅子は少々硬い…
その硬さが私の肛門への圧迫となり、かなりの痛みとして私にフィードバックしてくる。しかし待合室には数人の来院者と受付には女性がいる。
ここで肛門の痛みに負けて顔をゆがめるわけにはいかないと思い、私の静かなる戦いが幕を切るかに思えたが…
思いの外早く呼ばれたのだった。
そして診察室に入ると初老の医師が椅子に座っていた。
今日はどうされましたか?
受付でも聞かれた質問だが、ここは診察室だ。少々の恥じらいはあるものの、包み隠さずに今の現状を医師に伝えた。
医師は私にいくつかの質問をした後にこういった。
では診てみましょう。ズボンをおろして壁に顔を向けるようにしてベットに横になってください。
ついにその時が来た。
触診である。
私はこれが嫌で病院に来ることを拒んでいた。
決めた覚悟が緩みそうになるが、自らを奮い立たせてベットに横たわった。
じゃあ診ていきますね〜
医師はそう言って触診を始めた。
すると…
くぁwせdrftgyふじこlp!?!?!?!?!?
私の人生で味わったことのない激痛が肛門に襲い掛かる!
未知なる領域に足を踏み入れた私は、言葉にならない声を発した。
そう…人生で初めての「悲鳴」を上げたのだった。
こっちの方が痛いですか〜?
医師は異なるベクトルからの圧力によって疼痛箇所の確認を試みているようだったが…
私にとってはすべてが激痛であり、多少疼痛に変化があったところでその変化には気が付かず、その変化に気が付いたとしても言葉で言い表す余裕など持ち合わせていなかった。
そうこうしているうちに触診が終わった。
医師の話によれば、病名は肛門周囲膿瘍であり、投薬による治療を行って、改善する見込みがなかった場合には切開による膿の除去を行うという方針だという事だった。
しかしながら今回の肛門周囲膿瘍は直腸に近い箇所となり、もし内側に膿瘍が破れるようなら痛みがなくなる。しかし膿が臀部表面から出てきた場合には痔瘻になり手術が必要であるという説明を受けて診察が終わった。
診察が終わってみると数時間の拷問を受けたような気分でもあるが、一瞬で終わったような感覚もあり、私の心の内は形容しがたい気持ちになっていた。
ただ一つ言えることは、診察が終わり部屋を出る私の後ろ姿は、喧嘩に負けた猫のように小さく…ただ小さく見えただろう。
診察が終わり2日間は痛み止めにより疼痛の軽減はあるものの、特にこれといった変化はなかった。
しかし3日目の仕事中に、気が付いたら痛みが嘘のように消えていた。
憶測ではあるが医師の言っていた膿瘍が内側に敗れたものと思われる。
しばらくは肛門に違和感があり、肛門から膿が出る事がしばしばあったが、次の日には何事もなかったかのように痛みも違和感もなくなっており、膿が出る事もなくなった。
今思えば触診の際に医師が力を入れて押していたのは、膿瘍が内側に破れる事を期待しての行動だったのかもしれないが、その時の医師の心情を私が読み解くことが難しい。
これによって長きにわたる肛門周囲膿瘍との戦いは一旦の幕引きとなる。